「広域環境における大規模データの効率的処理および可視化に関する研究」
大規模科学計算の過程で生成される膨大なデータを効率的に処理するためには,広域にまたがる複数の計算拠点を効率的に利用することが今後重要となることが予想されます.当講座では,仮想マシン技術を用いて構成されたクラウドコンピューティング環境間の連携を想定し,インターネットを介して仮想マシン同士が通信する場合のスループット予測手法,および,それに基づいたデータ転送スケジューリング手法についての研究を進めています.また,大規模データの可視化にまつわる研究を行っています.
SDN-enhanced MPI
現在のスーパコンピュータのネットワーク (相互結合網) の課題として,静的であり,実際のアプリケーション実行時の通信を反映していないことがあげられます.当講座では,アプリケーションの通信特性を自動的に分析し,相互結合網を動的かつ柔軟に制
御する研究を推進しています.特に,並列分散計算アプリケーションの開発に標準的に用いられているライブラリである,Message Passing Interface (MPI) に着目し,MPI通信を加速することを目指しています.
ステージング通信とプロセス間通信の競合回避手法
計算機クラスタシステムでは,ジョブが利用するデータを事前にそのジョブの計算ノードに転送するステージングが行われています.ステージングは,他のジョブが計算ノード間で通信 (MPI通信など) を行なっている間にも実行されるため,ステージングのトラフィックとジョブ実行中のトラフィックとの間で競合が発生し,通信速度が低下する場合があります.本研究では,ジョブの計算時間を改善するために,Software Defined Networkingを用いた手法でこの競合を回避し,各ジョブの通信時間を削減する研究を行っています.
Visualization as a Service [web]
Tiled Display Wall (TDW) は,格子状に配置されたモニタ群から一つの巨大なディスプレイを構築する装置です.大阪大学サイバーメディアセンターでは,大規模可視化を希望する研究者にTDWの利用環境を提供する可視化サービスを運用しています.可視化サービスの利用者は,TDW上で多様な種類の可視化ミドルウェアの利用を要求します.この多様な要求に対応するためには,TDW上に多数の可視化ミドルウェア環境を構築し,それらを切り替えながら利用する必要があります.この切り替えでは複数のPC上で複雑な操作を全て手動で行う必要があり,可視化サービスの管理者の大きな負担となっています.本研究の目的は,TDW上の可視化ミドルウェア環境の切り替えを簡単化する技術を開発し,管理者の負担を軽減することです.
OpenMN
ネットワークへの要求が多様化傾向にある近年,限られたコストで構築されたネット
ワークを有効的に利用することが求められていますが,ネットワークに関する知識・技
術を有していないシステム開発者とっては困難です.Open MN (Open Multi-Networkin
g) は,ネットワーク要求の明示的かつ容易な指示により,ネットワーク資源の有効利
用を可能とする新たなプログラミングモデルです.
ロールベースセキュリティポリシに基づくネットワークアクセス制御システム
近年,企業の情報資産の流出事件が相次いでいます.情報資産を脅威から守るためには,個別のコンピュータでセキュリティ対策を施すことが重要ですが,さらに,ネットワークのレベルで不正アクセスを許さない仕組みが有用です.そこで,企業における組
織構成(部署,役職,プロジェクトなど) に即した,柔軟かつ細粒どなネットワークアクセス制御の仕組みが必要であると考えられます.本講座では,上記の考えに基づき,TIS株式会社との共同研究により,ロールベースのセキュリティポリシを持ったネット
ワークアクセス制御システム”FlowSieve” の研究開発を推進しています.
Sharing Economy of Things
身の回りの様々なモノがインターネットに接続されるInternet of Things (IoT) の時代が到来しています。しかし、それらのモノを活用したIoTサービスが広く普及するまでには至っていません。IoTサービス普及に向けた問題の一つとして、「IoT資源所有者」と「IoTサービス企画者」とを結びつける基盤がないことがあげられます。当研究室では、多人数間で資源・サービスの共有を行うシェアリングエコノミーの発想をIoTに応用したIoT資源共有基盤、Sharing Economy of Things (SEoT) の研究を推進しています。
深層学習の矯正歯科への応用
近年,畳み込みニューラルネットワークやリカレントニューラルネットワークなどのディープラーニング手法による画像認識や自然言語処理が大きな注目を集めています.また画像認識と自然言語処理を融合した研究も報告されています。当講座では,歯学部附属病院矯正科と協力し,上記のようなディープラーニング手法を矯正歯科治療に利用する手法について研究しています.例えば,患者の顔や口腔内の画像から,治療必要性の予測や治療計画書の生成を行なう手法などを研究しています.
Smart Campus Platform
実世界の人々の行動を解析することは様々な応用で重要です。本研究では、キャンパス内に設置したカメラと測域センサを用いた行動解析技術の研究を行っています。具体的には、吹田キャンパスの食堂エリアを対象として、時系列データとしてセンシングデータをデータベースに蓄積しながらリアルタイムに人流や混雑度を解析し、可視化するプラットフォーム開発を通じて、スマートキャンパス基盤構築を目指します。
スマートビルにおけるアクセス制御に関する研究
IoTやAIを活用し快適性・利便性の向上を実現するビル(スマートビル)の開発が進んでいます。ビル内のIoTシステムをサイバー空間から手軽に操作することで利便性を向上させられますが,不特定多数の人が出入りするビルにおいてはセキュリティ上,システムに対するアクセス管理が重要になってきます。
現状アクセス制御システムは各々のビルで独自に開発されることが多く,センサデバイスの膨大な数などから開発する負担が大きいのが問題になっています。そこで本研究では開発者の負担を軽減することを目的とし,ビルモデルを用いてアクセス制御を備えたIoTシステムを自動的に構築するツールの開発を行なっています。
ジョブスケジューリング
大阪大学サイバーメディアセンターが提供しているスーパーコンピュータOCTOPUSに、オンデマンドに拡張したクラウド計算資源に負荷をオフロードするクラウドバースティ ング機能が試験導入されています。
しかし、現状では、ジョ ブ待ち時間とクラウド利用により発生する費用 (クラウド コスト) を最小化するためにジョブをどのように OCTOPUS とクラウドにスケジューリングすればいいのか、すなわち、スケジューリングアルゴリズムの検討が十分になされていません。
本研究では、クラウドバースティング機能を有するスパコンを対象として、深層強化学習を用いたスケジューリングアルゴリズムの開発を行います。